○防府市中小企業振興基本条例

平成二十七年三月三十一日

条例第二十二号

豊かな佐波川のつくり出した平野に位置し、周防の国府が置かれていた本市のものづくりの歴史は古く、その起源を古代にさかのぼる窯業、防長両国の寺社の釣鐘・燈籠の大半を鋳造した鋳物業、播磨の赤穂に次ぐ三田尻浜の製塩業、豊かな水を利用した酒造業など、多彩なものがあった。また、中世に天満宮の門前町として形成された宮市では、商業が発達し、商人の座が成立した。座を統括する兄部こうべ家は、近世には本陣にもなった。近世では、門前町の宮市のほか、萩藩の水軍の本拠地である御舟倉が置かれた三田尻、塩浜で栄えた中関がにぎわいの中心であった。

近代に入り、地場産業は衰退していくが、本市における近代工業は、明治期の発明家柏木幸助の先駆的な事業に始まり、昭和初期の大資本による化学繊維工場の進出で本格化し、戦後の塩田跡地への化学工場、自動車産業の進出によって、隆盛を迎えた。こうして、本市は、港湾と臨海部に立地した製造業を中心とする産業都市として発展してきた。

既存の地元企業は、新たな発展を模索する中で、これらの大企業と協力し、本市の中小企業の産業集積を築いてきた。中小企業者、特にその多数を占める小規模企業者は、本市の地域経済を支える重要な存立基盤であるとともに、熟練の技術を引き継ぎ、産業を活性化させ、市民の雇用やまちのにぎわいを創出する源である。しかしながら、経済のグローバル化に伴い、中小企業者、特に小規模企業者の経営環境は厳しさを増しており、本市の地域特性を踏まえるとともに、本市の地域資源を活用し、経済の地域内循環を図ることが必要になってきている。

本市が、将来にわたって持続可能な特色ある地方都市として発展し続けるためには、中小企業者、大企業者、関係団体、市民そして市が、中小企業の果たす役割の重要性を理解し、協働して、本市の中小企業の振興に総合的かつ計画的に取り組むことが必要不可欠である。

ここに、中小企業の振興を市政の重要な柱として位置付け、地域経済を活性化し、豊かで住みよいまちの実現に寄与するため、この条例を制定する。

(目的)

第一条 この条例は、中小企業が本市経済において果たす役割の重要性に鑑み、中小企業の振興に関し、基本理念を定め、並びに市の責務、中小企業者、中小企業関係団体、大企業者及び金融機関の役割並びに市民の協力を明示するとともに、特に小規模企業者に配慮して、施策の基本的方針等を定めることにより、中小企業の振興に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって本市の経済の活性化及び市民生活の向上に寄与することを目的とする。

(定義)

第二条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

 中小企業者 中小企業基本法(昭和三十八年法律第百五十四号。次号において「法」という。)第二条第一項各号に掲げるもので、市内に事務所又は事業所を有するものをいう。

 小規模企業者 法第二条第五項に規定する小規模企業者で、市内に事務所又は事業所を有するものをいう。

 中小企業関係団体 商工会議所その他の中小企業の振興に関する団体をいう。

 大企業者 中小企業者以外の事業者で、市内に事務所又は事業所を有するものをいう。

 金融機関 銀行、信用金庫、信用協同組合その他の金融業を行うものをいう。

 市民 市内に住所を有し、又は通勤し、若しくは通学する者及び市内で事業活動を行う個人又は法人その他の団体をいう。

(基本理念)

第三条 中小企業の振興に関する基本理念は、次に掲げるとおりとする。

 中小企業者の創意工夫及び自主的な努力が促進されること。

 本市の地域特性を踏まえること及び本市の地域資源の活用が図られること。

 経済の地域内循環が図られること。

 市、中小企業者、中小企業関係団体、大企業者、金融機関及び市民の協働が図られること。

(市の責務)

第四条 市は、前条の基本理念にのっとり、中小企業の振興に関する施策(以下「中小企業振興施策」という。)を総合的かつ計画的に策定し、及び実施しなければならない。

2 市は、中小企業振興施策の策定及び実施に当たっては、次に掲げることに留意するよう努めなければならない。

 中小企業の実態を把握するとともに、広く中小企業者及び中小企業関係団体(以下「中小企業者等」という。)の意見を聴き、施策に反映すること。

 社会経済情勢の変化に対応した適切な措置を講ずるとともに、主体的に国、県その他の地方公共団体、中小企業者等、大企業者、金融機関その他の関係機関と連携を図ること。

3 市は、市が発注する工事の請負、役務の提供又は物品の購入その他の調達に当たっては、予算の適正な執行並びに透明かつ公正な競争及び契約の適正な履行の確保に留意しつつ、中小企業者の受注の機会の増大に努めなければならない。

4 市は、中小企業の振興に関する情報の収集に努めるとともに、必要な情報を適切に提供しなければならない。

5 市は、中小企業の振興に必要な制度、組織及び拠点の整備を図るよう努めなければならない。

6 市は、中小企業の振興の重要性に対する市民の理解を深めるため、中小企業者等と市民との交流及び連携を促進するよう努めなければならない。

(中小企業者の役割)

第五条 中小企業者は、経済的社会的環境の変化に応じ、自主的に経営の革新、経営基盤の強化及び取引条件の向上に努めるものとする。

2 中小企業者は、自らが地域経済の基盤を形成していることを認識し、従業員の福利厚生の充実をはじめとする雇用環境の整備、雇用の維持及び創出並びに人材の育成に努めるものとする。

3 中小企業者は、地域社会を構成する一員としての社会的責任を認識し、地域社会との調和を図り、市民が安全で安心して暮らせる地域社会の実現に貢献するよう努めるものとする。

4 中小企業者は、相互の交流及び連携を図るとともに、事業の共同化のための組織の整備に努めるものとする。

5 中小企業者は、市が実施する中小企業振興施策に協力するよう努めるものとする。

(中小企業関係団体の役割)

第六条 中小企業関係団体は、事業活動を行うに当たっては、中小企業者とともに第三条の基本理念の実現に主体的に取り組み、中小企業者に対する経営相談等の支援を行うとともに、市が実施する中小企業振興施策に協力するものとする。

(大企業者の役割)

第七条 大企業者は、中小企業の振興が地域経済の活性化に重要な役割を果たしていることを理解し、市が実施する中小企業振興施策に協力するよう努めるものとする。

2 大企業者は、地域社会の一員として、社会的責任を自覚し、中小企業者との共存共栄の下に、地域社会に貢献するよう努めるものとする。

(金融機関の役割)

第八条 金融機関は、中小企業者が経営の革新及び経営基盤の強化に取り組むことができるよう、円滑な資金の供給、経営相談等の支援を行うことにより、中小企業の発展に協力するように努めるものとする。

(市民の理解及び協力)

第九条 市民は、中小企業の振興が地域経済の活性化及び市民生活の向上に重要な役割を果たしていることを理解し、市が実施する中小企業振興施策に協力するよう努めるものとする。

2 市民は、市内において生産され、若しくは加工された産品を消費し、又は提供されるサービスを利用するよう努めるものとする。

(施策の基本的方針)

第十条 市は、中小企業振興施策の策定及び実施に当たっては、次に掲げる事項を基本的な方針として行うものとする。

 中小企業者の経営の革新、創業及び承継に関すること。

 中小企業者の創造的な事業活動に関すること。

 中小企業者の経営資源の確保に資するため、施設又は設備の導入並びに事業活動に有用な技術及び知識の向上に関すること。

 中小企業者の情報発信の促進及び販路の拡大に関すること。

 中小企業者の交流及び連携の推進並びに事業の共同化のための組織の整備に関すること。

 中小企業者の産業集積の活性化に関すること。

 中小企業者の従業員の雇用環境の整備、雇用の維持及び創出並びに人材の育成に関すること。

 中小企業者の資金調達の円滑化に関すること。

2 市は、前項の中小企業振興施策の策定及び実施に当たっては、経営資源の確保が特に困難であることが多い小規模企業者の経営状況に応じ、必要な配慮をするものとする。

(基本計画)

第十一条 市長は、中小企業振興施策を総合的かつ計画的に推進するため、中小企業の振興に関する基本的な計画(以下この条において「基本計画」という。)を策定しなければならない。

2 市長は、基本計画を策定するに当たっては、第十三条第一項の防府市中小企業振興会議の意見を聴かなければならない。

3 市長は、基本計画を策定したときは、速やかにこれを公表しなければならない。

4 前二項の規定は、基本計画の変更について準用する。

(財政上の措置)

第十二条 市は、中小企業振興施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

(振興会議)

第十三条 中小企業振興施策を調査審議するため、防府市中小企業振興会議(以下この条において「振興会議」という。)を置く。

2 振興会議は、中小企業振興施策について市長に意見を述べることができる。

3 振興会議は、次に掲げる者のうちから市長が委嘱する委員十五人以内をもって組織する。

 市民(公募による市民を含む。)

 中小企業者等

 学識経験者

4 委員の任期は、二年とする。ただし、補欠委員の任期は、前任者の残任期間とする。

5 委員は、再任されることができる。

6 振興会議は、必要と認めるときは、委員以外の者に対し意見を求め、又は資料の提出その他の協力を求めることができる。

(公表)

第十四条 市長は、毎年度、中小企業振興施策の実施状況を議会に報告し、これを公表しなければならない。

(委任)

第十五条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。

 抄

(施行期日)

1 この条例は、平成二十七年八月一日から施行する。

防府市中小企業振興基本条例

平成27年3月31日 条例第22号

(平成27年8月1日施行)