○防府市手話言語条例
令和七年七月二日
条例第三十三号
手話は、音声言語とは異なる語彙や文法体系を有し、手指や体の動き、表情などを使って表現する言語である。ろう者は、物事を考え、コミュニケーションを図り、お互いの気持ちを理解し合うために、また、知識を蓄え、文化を創造するために必要な言語として手話を大切に育んできた。
しかしながら、過去には手話が言語として広く社会に認められなかったことや、手話を使用することができる環境が整えられてこなかったことから、ろう者等は必要な情報を十分に得られず、多くの不便や不安を感じながら生活してきた。
このような状況を踏まえ、平成十八年に国際連合で採択された障害者の権利に関する条約や平成二十三年に改正された障害者基本法において、手話が言語であると位置付けられた。
本市においては、令和四年に防府市障害の特性に応じたコミュニケーション手段の理解及び利用の促進に関する条例を制定し、手話の理解及び利用の促進に積極的に取り組んでいるところである。
こうした取組を更に発展させるため、手話が言語であるとの認識に基づき、ろう者等や手話に対する理解を一層広げ、手話を使用しやすい環境を整備することにより、全ての市民が安心して生活することのできる共生社会の実現を目指し、この条例を制定する。
(目的)
第一条 この条例は、手話が言語であるとの認識に基づき、手話に対する理解の促進、手話の普及及び手話を使用しやすい環境の整備に関する基本理念を定め、市の責務並びに市民及び事業者の役割を明らかにするとともに、市が実施する施策の推進に必要な基本的事項を定めることにより、当該施策を総合的かつ計画的に推進し、もって全ての市民が安心して生活することのできる共生社会を実現することを目的とする。
一 ろう者 聴覚障害者のうち、手話を言語として日常生活又は社会生活を営む者をいう。
二 ろう者等 ろう者、中途失聴者、難聴者その他の手話を必要とする者をいう。
三 市民 市内に住所を有し、又は市内に通勤し、若しくは通学する者をいう。
四 事業者 市内で事業活動を行う個人又は法人その他の団体をいう。
(基本理念)
第三条 手話に対する理解の促進、手話の普及及び手話を使用しやすい環境の整備は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。
一 全ての市民が相互に人格と個性を尊重し合いながら、安心して生活することのできる共生社会の実現を目指すこと。
二 手話が言語であり、ろう者が日常生活又は社会生活を営むために大切に受け継がれてきたものであるという認識の下に行われること。
三 ろう者等の意思疎通を図る権利が尊重されること。
(市の責務)
第四条 市は、前条の基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、手話に対する理解の促進、手話の普及及び手話を使用しやすい環境の整備を図るため、必要な施策を総合的かつ計画的に推進するものとする。
(市民等の役割)
第五条 市民は、地域社会において共に暮らす一員として、基本理念に対する理解を深めるとともに、市の施策に協力するよう努めるものとする。
2 ろう者等は、市の施策に協力するよう努めるとともに、基本理念に対する理解の促進及び手話の普及に努めるものとする。
(事業者の役割)
第六条 事業者は、基本理念に対する理解を深め、ろう者等が利用しやすいサービスの提供及びろう者等が働きやすい環境づくりに努めるとともに、市の施策に協力するよう努めるものとする。
(施策の推進)
第七条 市は、次に掲げる施策について推進するものとする。
一 手話に対する理解の促進及び手話の普及に関する施策
二 手話による情報の発信並びにろう者等が情報を取得しやすい環境及び手話を使用しやすい環境の整備に関する施策
三 手話による意思疎通の支援をする者の養成及び確保に関する施策
四 手話を学ぶ機会の確保及び手話に接する機会の提供に関する施策
五 災害等の非常時におけるろう者等による情報の取得及び意思疎通の支援に関する施策
六 前各号に掲げるもののほか、この条例の目的を達成するために必要な施策
2 市は、前項各号に掲げる施策を推進するために必要があるときは、ろう者等、関係団体その他市長が必要と認める者の意見を聴くものとする。
(事業者への支援)
第八条 市は、ろう者等が手話を使用しやすい環境を整備するために事業者が行う取組に対して、必要な支援を行うよう努めるものとする。
(情報通信技術の活用)
第九条 市は、第七条第一項の施策の推進に関し、手話に関する情報通信技術の発展及び実用化の進展の状況を踏まえながら進めるものとする。
(財政上の措置)
第十条 市は、第七条第一項の施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
附則
この条例は、公布の日から施行する。