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周防国分寺金堂平成の大修理

更新日:2021年2月1日更新 印刷ページ表示

周防国分寺金堂平成の大修理

解体

天平の甍
周防国分寺は、天平の頃(約1250年前)、聖武天皇の勅願によって建てられたといわれる。応永のころ火災により伽藍のすべてを焼失する。大内氏により再建される。現在の堂は安永8年(1779)ごろ、毛利重就によって建造される。
平成元年(1989)、国の重要文化財に指定される。建立後200余年たち、瓦葺の弛緩が雨漏りの原因になり、木部の腐朽破損、白蟻による床下周りの被害など激しく、全解体修理が国、県、市の補助により行われる
こととなる。

名称:重要文化財国分寺金堂保存修理事業
事業期間:平成9年7月~平成17年2月(92ヶ月)
事業費:約19億円
施工請負:株式会社鴻池組
設計監理:財団法人文化財建造物保存技術協会
※技術者の人間国宝といわれる、選定保存技術保持者松浦昭次氏が大工の棟梁として工に当たられた。

金堂

金堂

梁間断面図

梁間断面図

桁行断面図

桁行断面図

構造と規模
本瓦葺二重入母屋(いりもや)造、桁行7間(約22m)、梁間4間(約16m)、高さ約18m
正背面向拝一間唐破風からはふ)造

構造と規模

修理前正面

修理前正面(平成9年)
平成4年(1992)台風後一度修理。
平成9年(1997)に大雨により上層南面の瓦がすべり落ちる。

瓦の解体

瓦の解体(平成9年11月)
解体は上部から始まる。東側妻部(つまぶ)の瓦を解体してい

るところ。瓦は土居葺の上に土をのせて葺かれている。

瓦置き場

瓦置き場(平成9年)
32種、4万5千枚といわれる瓦。このうち使用に耐えるものは洗浄し、含浸補強されて再使用される。その割合は40%弱。

素屋根建設

素屋根建設(平成10年8月)
工事は、文化財がもつ意匠・材料・技術・環境が本物として保存され、後世に伝えられることが求められる。そのために各部材にはその名称と場所を記した「番付札」が付けられ、ていねいに解体される。
長期にわたる工事で、堂全体を覆う鉄骨造りの素屋根が設けられる。

上層屋根野垂木

上層屋根野垂木(平成10年12月)
野地板が解体され、野垂木が現れたところ。
手前の妻部の屋根は、まだ野地板と土居葺が残っている。

上層屋根小屋組

上層屋根小屋組(平成11年1月)
野垂木が取り払われて、屋根の骨組み(桔木(はねぎ)、母屋(もや)等が現れたところ。
最上部に大棟木が見える。左側が正面、手前は東側妻部で妻飾りが残る。
小屋組の用材は大部分が松の自然木。

上層上部小屋組解体

上層上部小屋組解体(平成11年2月)
妻部より上部が解体されたところ。
両側の屋根の母屋が見える。右が正面、左が背面、四周の工事ステージには解体された部材が置かれている。

上層軒の解体

上層軒の解体(平成11年3月)
軒が解体されたところ。
上層の軒下の組物・四隅の尾垂木は残っている。

組物解体

組物解体(平成11年4月)
解体された上層の組物(斗、支輪等)はステージに並べられている。

下層屋根野垂木

下層屋根野垂木(平成11年5月)
工事用ステージを取り去り、下層屋根・野地板を解体したところ。
中央は上下層の屋根の間の木組。

桔木

桔木(平成11年6月)
桔木はテコの原理を使って軒を支える。
人間の骨格に当たる。

下層軒回り

下層軒回り(平成11年6月)
軒の桔木を取り去ったところ。中央には大梁とその上部の木組が残り、内陣の組物も見える。

一重大梁

一重大梁(平成11年7月)
大梁上部の木組が取り除かれたところ。
大梁は最大でも径90cmに及ぶ、内陣や側廻りの天井が吊木(つりぎ)で釣られている。

下層組物

下層組物(平成11年8月)
側廻りの天井が取り払われ、これから組物を解体しようとするところ。

内陣天井格縁

内陣天井格縁(ごうぶち)(平成11年9月)
一重大梁や天井板が解体されて、内陣の天井格縁が現れたところ。左右の向拝は、野垂木解体中。

内陣丸柱

内陣丸柱(平成11年10月)
内陣(須弥壇のあるところ)、側廻りの天井格縁・棹縁(さおぶち)組物などが解体され柱だけになったところ。貫(ぬき)、連子(れんじ)はまだ残る。

床廻り

床廻り(平成11年11月)
床板をはがしたところ。
大引の上に根太が渡されている。白蟻の被害の最も激しかったところである。

礎石と調査

礎石と調査(平成12年1月)
建物のすべてが解体された更地。
市教委によって諸調査が行われる。地震対策の地質調査もされる。
礎石の調査から、時代による堂の違いが判明する
・創建時(奈良時代)横24.3m、縦13.2m(平屋)
・大内盛見の再建(室町時代)横20.3m、縦13.5m(平屋)
・毛利重就の再建(江戸時代)横22.0m、縦15.8m(重層入母屋・唐風向拝付)

墨書

墨書
正面向拝から13点の墨書が発見される。
数名の宮市在の大工の名が見える。写真は蟇股
(かえるまた)下端の墨書で「防府市宮市今市住人松下吉右衛門、安永八歳・・・」の刻字がある。

落書

落書
工人の描いた落書きの一つ。
床板に描かれたもので、大工が「やりがんな」を使っている。裸足だが、きちんとした服装をしている。
落書きは、花、野菜、模様など多種多様。

基壇せん積み

基壇せん積み
せんは、粘土をレンガ状に固めて焼製したもので、東南隅に高さ50cmぐらい積まれている。
基壇全部に使われていたかは不詳。(写真提供:市教委)

写真図面提供:財団法人文化財建造物保存技術協会

組立

新材の加工 

新材の加工(平成12年7月)
八角に製材された柱材は、角を取って丸くされ側廻りに使わる。樹種は桜、桂である。
※墨を引いているのは松浦氏、昭和4年静岡県藤枝市に生まれ、京都の海住山寺立重塔・奈良の法隆寺山門等、国宝5カ所、重文27カ所の修理を手がけた宮大工。

部材の補修

部材の補修
文化財の修理では、元の材料をできる限り再用するのが原則である。むかしの人もそうしたようで、須弥壇(しゅみだん)は一部安永以前の古材が利用されている。
部材は傷んだ箇所を矧ぎ木・埋め木・継ぎ木・含浸(硬化防虫・防腐効果のある液をしみ込ませる)古色塗り等を施し再用する。古材の再用割合は70%

床下叩き

床下叩き(平成12年12月)
眞砂土・赤土に石灰・塩化カルシウム(苦塩)を混ぜて木槌で叩く。(三和土)

立柱安全祈願

立柱安全祈願(平成13年1月)
軸柱を仮置して工事の安全を祈って祈願式(内陣にて)。祈願の祈りをあげているのは福山秀道住職

内陣軸部組立

内陣軸部組立(平成13年2月)
欅・塩地・栂の丸柱14本(すべて古材・長さ約8m)を立て貫で連ねる。床の大引も渡る。

内陣組物完了

内陣組物完了(平成13年4月)
内陣軸柱に組物(斗(ます)、肘木)が付き側廻りの柱も立つ。

内陣組立完了

内陣組立完了(平成13年5月)
内陣の天井が張られ、一重大梁が渡る。

正面向拝

正面向拝(平成13年5月)
茨垂木と呼ばれる化粧垂木が並び、唐破風造の姿が現れたところ。
背面の向拝も同様に作られる

下層軒工事

下層軒工事(平成13年7月)
側廻りの天井が張られ、地垂木を取り付けるための丸桁(がぎょう)が渡されたところ。

下層軒回り組立

下層軒回り組立(平成13年8月)
地垂木を取付け、化粧裏板張りなどが行われているところ。

下層桔木組立

下層桔木組立(平成13年9月)
四面軒の桔木を取付けたところ。

下層桔木

下層桔木(平成13年9月)
桔木に母屋を組む仕口を作っているところ。

下層母屋組立

下層母屋組立(平成13年10月)
桔木に母屋(横木)を取付けたところ。
この上に野垂木を取りける。

下層野地坂

下層野地板(平成13年11月)
下層屋根は、これに土居葺をして瓦を置くと完成。

上層組物

上層組物(平成13年11月)
下層屋根上にステージが作られ、上層屋根の木組みが始まる。
側廻りの柱頭には組物(斗・肘木)が置かれている。

上層組立

上層組立(平成13年12月)
上層小屋組が行われ、四隅には隅木が付く。

上層軒化粧裏板

上層軒化粧裏板(平成14年1月)
軒先工事中、地垂木に化粧裏板が張られたところ。

五重小屋梁組立完了

五重小屋梁組立完了(平成14年2月)
桔木、隅木も取付けられ、中央の長い1本梁は六重中引梁。

上層組立完了

上層組立完了(平成14年4月)
桔木に母屋が取付けられる。中央は大棟木、手前妻部は野地板が張られ、工事用ステージが作られている。

上層屋根野垂木組立完了

上層屋根野垂木組立完了(平成14年4月)
母屋に野垂木が取付けられ、屋根の美しい線が現れる。

上棟式

上棟式(平成14年5月)
13日、上棟を祝って上層ステージで上棟式、大棟木に取付けられる棟札には、住職、大工の名前、修理年月日等を記入して跡を残す。
僧侶、烏帽子直衣姿の大工が見える。

上層屋根土居葺

上層屋根土居葺(平成14年7月)
こけら板(さわら材)を釘で葺く。使われたこけら板は約15万枚

上層屋根平葺完了

上層屋根平葺完了(平成14年7月)
屋根は平瓦と丸瓦で葺く本瓦葺といわれる葺き方、平瓦は横32cm、縦36cm。雨漏りに備えて3分の2も重ねる。補充瓦は奈良で焼かれた。

上層屋根丸瓦葺完了

上層屋根丸瓦葺完了(平成14年9月)

上層妻部屋根縁

上層妻部屋根縁(平成14年9月)
箕甲(みのこう)部といわれるところで掛唐草(かけからくさ)瓦を葺く。突起が列をなしている所に降棟(くだりむね)が付く。

縁高欄組立

縁高欄組立(平成14年11月)
縁板、縁束、高欄等の組立、高欄柱には鋳物の擬宝珠が付く。鋳物の鋳造は大阪の業者で作製。

上層瓦の目地漆喰

上層瓦の目地漆喰(平成14年11月)
棟、軒先等要所要所に目地漆喰が付けられる。

大東目地漆喰

大棟目地漆喰(平成14年11月)
大棟は瓦を積み高さ93cm、大棟鬼瓦の所は高さ1mになる。
目地漆喰も頑強に施される。避雷針が取付けられる。

上層屋根完成

上層屋根完成(平成14年11月)
目地漆喰が完了し、妻飾も終わる

上層軒下部の組織

上層軒下部の組物(平成15年1月)
上層軒裏の垂木、肘木等の組物が美しい。
下層屋根はまだ土居葺の状態。

下層屋根の土留桟

下層屋根の土留桟
土居葺の上に土を留める土留桟を付けたところ。

下層屋根瓦葺

下層屋根瓦葺(平成15年4月)
丸瓦をふせているところ。

下層屋根の目地漆喰

下層屋根の目地漆喰(平成15年6月)
軒先、葺き終わり・際熨斗(きわのし)等の目地漆喰が終了。
上屋根の雨水の落ちる部所は平瓦を仮設的に置く。

内陣後背の壁紙下貼り

内陣後背の壁紙下貼り(平成15年7月)
壁紙本紙は宇部市の絵師が作製。

正面向拝完了

正面向拝完了(平成15年8月)
修理前と同じように鬼瓦は漆喰で巻く。
背面の向拝も同様。

風鐸新規作製

風鐸新規作製(平成15年1月)
左(附指定)は当初で、安永八歳の刻字が見える。これを元に新しく作製する。
上下軒先四隅に鈎るされる。

床下木組

床下木組
通風を考えて高い床。多数の床束が大引を支えている。材は松の自然木。

素屋解体

素屋解体(平成15年9月)
平成10年6月から6年間、堂を守っていた素屋根が除去される。

ほぼ完成した金堂

ほぼ完成した金堂(平成15年10月)
残っているのは内装、外回り、防災施設等の工事。竣工は平成16年9月の予定。8年間にわたるこの事業の経緯や資料等の展示観覧について、寺では考え中とのこと。
なお、平成16年6月25日~8月1日、山口市山口県立美術館で周防国分寺展が開催された。

落慶法要

落慶法要
平成16年11月7日金堂の完成を祝い、盛大に落慶法要が行われた。

 

写真提供:財団法人文化財建造物保存技術協会